只見から六十里越峠

河之邊 浩

今日のコースは趣向を変えてオール国道である。 といってもの駒止トンネルを抜けて、 只見を経由して六十里越を越えるわけで、 山岳地ツーリングに変わりはないだろう。 というわけで 42B の空気圧を高め (5.0 気圧) にして舗装路の走りに備える。ちょっと早めの 8:38 に出発。

例によって今日も天気は抜群である。 晩秋に降雪で引き返した甲子峠と初夏に積雪と雨で引き返した 六十里越峠以外にこのあたりを走るときはすべて好天に恵まれている。 駒止トンネルを抜けて山口までは昨日とまったく同じコースを走る。 寮からのダートの下りはすこしはねてしまうのでゆっくりと下る。 農道に出ると風もないので 40km/h 台のペースで走る。 さすがに圧を高めると楽だし足を止めてもスピードが持続する。 ところが調子にのりすぎて R289 に出る手前で後輪がパンク。 路面は見ていたつもりだが、 2 x 5 mm 位の金属のパイプのようなものがタイヤセンタに食いついていた。 しぶしぶ修理する。 いままではチューブごと交換していたが、 今回は直前に購入しておいたパッチセットが役に立ってしまった。 でもパンクしたチューブを折り畳んで収納する手間を 考えると修理の時間はさほどかわらない。

気をとり直して R289 には 9:15 到着。 距離は 7.86km で昨日よりも 0.02km 短いのは圧を高めたせいだろうと思う。 駒止トンネルまでは一気に走る。 途中、乗用車で来た研究室のメンバが手をふりながら抜かしていく。 10:15 にトンネル入口に到着。 今日は昨日の教訓を生かして帽子をしまって、高速ダウンヒルに備えた。

10:20 に出発。 あいかわらずトンネルの中は涼しい。 昨日は出口側で巨大通風器がすごい音をたてて動作していたが、 今日はそれほどでもない。 通行量も昨日ほどはないのでそれに合わせているのだろうか。 トンネルを抜けるとすぐに激しい下り坂。 例のまっすぐの下り道では 69km/h ほど出る。

でもうしろからあっさり乗用車が抜いていった。 そのくらい道幅もあるし見通しも良い。 これ以上の速度を狙うにはリムのフレをなくすのはもちろんだが、 それ以上にバルブやリムの接続部の重量のアンバランスを オモリで補正する必要があるだろう。

勾配もゆるくなって、川が左に見えてきた。 あっ、なんかでっかい動物がいるなぁ、 と思って停車するとなんとカモシカだった。 川で水遊びをしていたようだった。 にらめっこしていたらすっとんで逃げていってしまった。 でも石につまづいてオロオロするばかり。悪い事したかなぁ?

そんなこともあって 10:34 には山口に着く。 昨日と同じ道中でも印象はまったく違う。 ここからは只見までだらだらの下りがつづく初めて走る道だ。 いきおいにのって 40km/h 台でがんがん走る。 このあたりは伊南川沿いで結構開けた地形だが 人家は少なく自然の状態が良く残っている。 交通量も心配していたほどではない。 途中、唱平の診療所のわきの食料品店でジュースとぱんを買う。 ザックの中にはジフィーズが入っているが、走りを堪能しているの で腰を落ち着けてクッキングする気分ではない。

再度下り調子で只見には 11:58 に到着する。 駅で水を補給してベンチで休憩する。 もし六十里旧道(登山道)を行くなら時間がぜんぜん足りないだろうと思う。 そして出発しようとすると前からなにやらあやしげな乗用車が近付いてきた。 研究室のメンバの車で、南郷スキー場の温泉につかっていたとのこと。 ちょっと話してから出発するが、なぜか「かわのべさんバンザイ」三唱された。 まぁ駅前といっても本当に誰もいないから恥ずかしくもないが。

R252 を小出方面に向かう。 途中の田子倉湖周辺は行楽地と化していたものの 人造湖周辺は送電線と国道周辺を除き本当に林道も含めて人造物がない。 田子倉ダムサイトからは観光船が運行されていた。 しかし山岳ツーリストには場違いなので早々に過ぎ去る。

途中ボトルの中身を沢の水に入れ換えたりする。 この沢の水を飲むと百まで生きると言ったおじさまを後に ゆっくりと景観を鑑賞しながら登って行く。 途中谷を廻るところで若干のアップダウンがあったものの、 いよいよ 14:32 峠に到着した。 田子倉側はお茶を飲めそうがところがないので、 路面が良くないトンネルを抜けるとおあつらえむきの場所があった。 林道風の道を少し登ってみたがこれはすぐに行き止まり。 さっそく腰を落ち着かせてバーナをセットする。 今回初めて使うことになる。 できた紅茶を飲みながら今回の 3 日間のツーリングを振り返るが、 もう次はどこへ行こうかとあれこれ考えている。

大白川の列車の時刻にはまだ余裕があるのでゆっくりしていたが、 身支度を整えて最後の走りに備え、15:06 出発。 エピロークにふさわしくゆっくり下っていく。 大白川側は以前登ろうとして雨であきらめた経験があるので、 道は良く覚えている。 そのときは6月なのに積雪で通行止めだった。 洒落たデザインの大白川駅に到着したのは 15:34。 ここで今回のツーリングも幕を閉じた。

只見線は山屋でいっぱい。それでもなんとか座れたが、 帰りの新幹線は只見線の時刻も決まっていることだし 指定席をとっておくべきだった。


走行データ

参照五万図 (かすっている部分が多いので枚数が多い)

この紀行文は平成 6 年 7 月 fj.rec.bicycles に投稿した記事に若干の加筆修正を加えたものです。


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