秋田から田沢湖へ河北林道

河之邊 浩

秋田市街の古びたホテルを 8:17 に出発する。 平日なので市街地は通勤通学ピークで車道も歩道も大混雑であるが 県道 28 号線(秋田岩見船岡線)に沿って三内まで進むことにする。 この県道は秋田市街を抜けるすぐ遠回りに道が付いているので 寒川経由のショートカットコースをとるが、 このあたりですっかり車も人もいなくなり大変良い雰囲気に包まれる。 ただし途中で高速道の工事をしておりダンプカーの往来が多いのが気になる。

寒川を越えて県道に戻るが、 勾配がほとんどなくまっすぐの道がつづく。 天気は良くすでに暑さは背中の汗に現れている。 今回は例の新車 (幅 42cm のまっすぐハンドルの ランドナーというかパスハンター) にサドルバッグ装備 なのでザックで背中が汗で水びたしということはないのが救いだ。

途中わずかなアップダウンで畑と林ののなかを進むと ほどなく三内に到着する。 距離はちょうど 20km で時計は 9:37 を指している。 ここで集落の中をうろうろして食糧を調達する。 このときまだダムから地道ということは夢にも考えてなくて、 かなり奥まで舗装されているのだろうと思いこみ、かなりの余裕である。

さて、休憩ついでのペースも脱して 9:52 に出発とする。 このとき地図を良く見ず、 いきなり岩見ダム (河北湖) への道を誤り、 県道をそのまま進んでしまった。 地図ではまっすぐのようだったが、 きっと左側に入り組んでいたのだろうか。

そろそろ気合いを入れてスピードに乗ってしまったため 日差しの向きでおかしいと気がついたときには 5km もコースアウトしていた。 地図で現地確認をして戻らねばならない。 このまま素直に戻っていくよりも萱森へ直通するほうが近いので、 今度は間違えないように頻繁に地図で確認しながら駒を進めた。 そしたら萱森には地図にはない 2 車線のバイパス道路ができていた。 この道を行っても旧道を行っても途中で合流することはすぐに想像がついたが、 一応地図にのっとって旧道のほうを走ってみた。 この時点で距離は 30.8km 時刻は 10:29 であり、焦りを感じる。

途中、筑紫森岩脈が名所のようであるが、 標高 300m をかせぐのは自転車にとっては荷が重いのでもちろんパスする。 とりあえずダムまで急ぐ。 例によってダムまでの登りはきついが いちばん軽い 27T x 26T を使うまでもなかった。 ここで 4 駆に抜かされるが、 平日であることもあり基本的に車はまったくこない。

ようやくダムに着くがその先が地道になっていて、 目が点になる。 河北林道は標高もそんなに高くないし楽勝だろうと思っていたが、 少々甘く見すぎたようだ。 いざとなったら秋田内陸縦貫鉄道もあることだしと考えていたが、 本当にそれのやっかいになりそうな 予感がしてきたので時刻表を確認しておいた。 どうせ今日も朝出発したホテルに到着すればよいので、 そういう意味で気持は楽ではある。

岩見ダム(36.58 km 地点)を 10:55 に出発するが、 しまった地道なのでとても走りやすい。 湖水は小雨を反映してかなり干からびていた。 そういえばいくつか水がなくなった田んぼも見られたが、 稲の成育そのものは良好のようであった。 5 km ほど行くと冷たい沢の水が流れているのでここで小休止。 標高 200m 程度なのに水はとても冷たくておいしい。

さらに 5 km ほど行くと「町道河北線」の看板が立っている。 このあたりから急に道が悪くなってくる。 勾配もきつくなる。 周辺は谷の中でさいわい木陰が多いのでなんとか暑さはしのげる。 が 5 万図の道が実線になるあたりからは押したり乗ったりで なかなか距離がはかどらない。 こうなると時の経つのはとても速く、 30 分や 1 時間はあっというまに過ぎていく。 もうあと 1 km というところで ハンガーノック寸前で危険なのであっさり食事にする。 先月の多々石林道戸板峠 と似たようなパターン。 できれば峠で食事がしたいものだ。

元気をとりもどしたところで 14:05 に出発する。 そしたらあっというまに峠に着いた(56.20km 14:26)。 疲れておなかがへっているとこの 1km がぜんぜん進めないわけ。 次からこんなコースのときには登りの途中でも食事タイムを 設けることにしよう。 ここでデザートのフルーツポンチをたいらげて 支度を整えたらすぐに下り始めた。

下りとは行っても途中までは尾根を走っている。 山の地肌がむきだしでしかも木が立ち枯れているので、 振り返るといかにも自然破壊のイメージであるのが残念。 だいたい今走っている林道そのものが自然破壊といわれればそれまでだが、 もうすこし木を残しておけないものだろうか。 いや、残したとしてもクルマの排ガスで殺られるのだろう。 と、そんなことを思っていると左手の草むらからいきなり カモシカが飛び出してきて林道をくだっていった。 目前約 5 m くらいの距離。驚いたのなんのものすごい迫力だ。 あっちにすれば、変な人間の物音で驚いているのだろうが。 こっちに向かって走ってきたらどうしよう、なんて考えたけど、 ヘビなんかにしてもたいていあっちに逃げていってしまう。 今回も林道の登りの途中でニョロニョロしていた。

6 km くらい行くとキャンプ場が現れる。 ここで十字路になって地図にない道が現れるがここは看板どおり左折する。 さらに 5 km くらいでようやく長かった地道も終り、舗装になる。 結局ダート区間は 31km に及んだ。 そして舗装路を少し走るともう秋田内陸縦貫鉄道沿いの比立内である (69.15km 15:54)。

ここから輪行しても良いが、 ダートが長かっただけになんとなく走り足りない。 というのも私が得意とする日帰りツーリングの形態は、

という感じであるが、 このまま終っては「結」の部分が欠けてしまうからである。 それに東京在住の私には秋田周辺は そんなに頻繁に来れないということも考えて、 もうすこし走ることにしよう。

そこで羽州街道 (R105) を南下する。 ところが無名の峠まで結構きつい登りだ。 秋田内陸縦貫鉄道は、この峠をトンネルで貫くことにより南北に貫通した。 しかし国道上の私は西陽の影響をまともに受け、なかなかはかどらない。 スノーシェルターがせめてもの救いとなる。 この国道、交通量もそれなりにあるので注意しながら走るためにさらに 疲れは増す。それでもなんとか 1 時間かけて 最後のシェルターにたどりついた (78.38km 16:58)。

ここから角館までは下り調子であるが、 角館までは距離が結構あることと、 せっかくだから田沢湖に寄りたいということで 田沢湖駅の列車の時刻を気にしながらひたすら走る。 ここでフロントトリプルの 44 x 40 x 27 のクロスが生きてくる。 最近はリヤ 8 段が常識かもしれないが、 私のは以前どこにでもあった ウルトラ 6 の 13 x 15 x 17 x 20 x 23 x 26 である。 つまりこれだとフロントと組み合わせて ほぼ 13 x 14 x 15 x 16 x ... と同等のクロスレシオが 得られる利点があるので意識してフルに利用した。 慣れれば楽しいものである。 チェンジも微妙な操作をしないときちんと 動いてくれないサンプレ SLJ4000 だし。

ところで道路の方は右へ左へ上へ下へくねくねしているけれども、 鉄道の線路は盛り土してトンネルを貫いてひたすらまっすぐと続い ていることが印象的だった。 鉄道のほうがエネルギ消費が少ないというのは こういったことも関係あるのかとも思った。 自転車もそういう線形の道だと楽なのだが。

さて、県道 38 号線方面に左折する。 こからやや登りがあるが、たいしたことはなく、 峠を超えて少し下るとじきに田沢湖が見えてきて、 その雄大さに笑みがこぼれてくる。 湖畔はくるまも少なく走りやすい。 途中に水が湧き出ていたので小休止して洗顔する。 あとはひたすら田沢湖駅めざして走るのみ。

田沢湖駅 18:53 到着 (距離は 116.84km)。 急いでバラして 19:19 の特急たざわ秋田行きに乗り込んだ。 この特急も秋田新幹線ができるまでの命であろう。


走行データ

参照五万図

この紀行文は平成 6 年 7 月 fj.rec.bicycles に投稿した記事に若干の加筆修正を加えたものです。


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