公開日 2008年12月26日 | 探訪日 2008年9月14日 |
更新日 2009年1月31日 | 河之邊 浩 |
峠直下の最後のつづら折れで180度進行方向を変えながら登り詰めてきた車道もそろそろ終わりだ。前方に見える左カーブの警戒標識の先が甲子峠だろう。
勾配が緩くなってきたこともあり、甲子林道の登り最後のスパートをかける。
やっと着いた。時刻は14時7分。会津下郷を出発してから3時間33分かかった。林道ツーリングならここが最高所だが、今日はこれからまだ登らねばならない。
この写真の中にこれから登るべき道は隠されている。お分かり頂けるだろうか。
右にある「←甲子峠登山口」の黒い指導票はまだ新しく最近のもののようだ。左の白い指導標は「至甲子温泉」「沢倉南至」の文字が今にも消えそうに書かれている。至南倉沢が右から左に書かれているのが面白い。
そして白い指導標のさらに左側には林道起点にも見られたものと同じ看板が建っている。破損はないものの全面が錆に覆われており、峠の気候の厳しさが感じられる。
さらに視点を左に回転させ、甲子峠を越えた向こう側の鎌房林道方面を望む。駐車している乗用車の主は登山者であることが推測できるが、同型の幌付トラックが2台も駐車しているところを見ると、山で何か工事でもしているのであろうか。
続いて左側を見ると、甲子山とは逆の大白森山登山口の指導票と階段状に踏跡がついた登山道が見て取れる。こちらのほうが草もなく道形は明瞭である。指導票は下郷町側に設置されているが、柱には「西郷村」のプレートが貼ってあった。
視点を戻して甲子峠を奥まで進んでみると、鎌房林道入口は大きな岩で車止されていた。一般通行禁止の新しい看板が目立つ。この看板は柱が太く土台もコンクリートでしっかりできていて大きな岩とともに通行禁止の意思の強さを思わせるのだが・・・
すぐ左は乗用車が軽く乗り越せる程度の盛土の道になっている。大きな岩の車止はほとんど意味がないような気がするが、通行禁止の強い意思を表現するためのオブジェということだろうか。
鎌房林道は最初平坦で若干の登り返しもあり、以前ランドナーで下った時にはかなりの手応えがあったことを覚えている。そのランドナーも今はなく、今日再訪できたのは生身の体と輪行袋だけである。
下郷町側に戻り、先ほど登ってきた道を振り返って撮影する。舗装は甲子峠直前で切れている。
甲子峠を一巡して撮影も完了したので、そろそろ登山道に入る準備をする。
これから向かう国道登山道の右側に設置された正方形の白い看板には日光国立公園特別地域に関してと旭岳への登山道はない旨の注意が記載されている。
時刻は14時17分、これより登山道に入る。写真ではいきなりすごいブッシュを掻き分けて行くように見える。確かに熊笹が少し張り出してはいるが、踏跡はしっかりしているので、たいしたことはない。
自転車の前三角に頭を入れてザックにシートチューブを乗せて行くと楽なのだが、頭上が狭いのでそれは無理。仕方なくトップチューブを右肩に掛けて行く。あまりに急坂なので前輪が前方の地面をこすってしまう。なので前輪を持ち上げ気味に担ぐと同時に押し上げていく感じになる。
たった1分登っただけでもう息切れするので、歩を止め写真を撮る。写真では良くわからないかもしれないが、なかなか急な坂である。でも土の道で岩はまったくないのでさほどの困難はない。ただ土が湿っていて滑り易いので登山靴は必須だ。
5分経過して、だいぶ登ってきた。振り返ると木々に吸い込まれて行くかのような鎌房林道と大きな岩のオブジェを回避する盛土の道の様子が良く見える。
(撮影範囲は後述する地図を参照してください)
甲子峠から8分で甲子第1ピークに到着した。天気が曇ってきたものの、360度素晴らしい展望だ。
進行方向右手斜面には、苦労して登ってきた甲子林道の姿が一望できる。「西洋のお城」も中央付近に写っていてその前後だけ路面が黒くて舗装が新しいことが再認識できる。
さらに視点を左に移動して甲子林道の遠方を望む。右下の沢筋には堰が出来ているようだ。
ほぼ中央には足倉山が若干霞んで見えている。足倉山の南西の麓が甲子トンネルの下郷町側ポータルのあたりだったので、甲子トンネルの長さが実感できる。
次は進行方向の甲子山方面を望む。奥に見えるひときわ高い山が旭岳である。甲子山はその手前に埋没している。旭岳に比べるとなだらかに見えてしまう。
この甲子山の山肌にほぼコンターラインに沿って国道登山道が付いているはずだが、深い原生の森の中にすっかり隠れてしまっている。
本当に道は続いているのであろうか?
さらに視点を左に移すとこれから行くべき尾根がはっきりと見て取れる。ちょうど突き出ているあたりが猿ヶ鼻であろう。
そして肉眼でもはっきりと認識できたのであるが、左下に写っている白っぽい部分が、国道登山道の終点付近の新道に思えた。
最高倍率に拡大して地形図と対比しながら改めて見てみると、安心坂トンネルのトンネルポータルとそれに続く甲子大橋の上にバスが4台並んでいるようだ。甲子大橋はまだ開通していないのでバスが駐車していてもおかしくはない。
あそこまで陽が明るいうちに徒歩で行かねばならないのだ。
なんとなく荷物と化した自転車も撮ってみる。そこで初めて気付いたのであるが、昨年購入したM1のフレームカラーが必ずしも気に入っているわけではなかったのだけれども、こうして山に持ち込むと土や岩の色と同化してあまり目立たなくなるのだ。
これは登山者に遭遇しても違和感を感じさせなくて良いのではないかと思った。あまりにけばけばしい蛍光色なんかだと抵抗感を持たれて良くない印象を持たれて、最終的に登山道への自転車の持ち込みを禁止されてしまうことをとても危惧している。
だから身なりにしても自転車がなければただのクラシカルな登山者にしか見えないようにしている。裾がないニッカーはもともと自転車にも好都合だし。
さて、登山道国道が通う山容の全貌を俯瞰したところで、次の攻略点である甲子第2ピークを目指す。現在時刻は14時31分である。
写真では右側の草が切れているところから落ちるように下って行く。甲子第1ピークと同様に小石が多く坂がかなり急なので、自転車は担いで行くほうが楽だしそのほうが却って速い。
甲子第2ピークまでは下っている最中でも明るい尾根道が良く見えているので不安はまったくない。
小石が多い急坂が一段落すると樹林の中を行くようになる。まだ甲子第2ピークが写っている写真の中央付近である。ここまで来ればもう自転車は押して行けるようになる。
しばらく進んで行くと、樹林が途切れ草地になる。まるで植物園にでも来たかのような種々の草木が豊富に生い茂っている。
熊笹が路上まで張り出しているが踏跡はまだしっかりしている。やがて明るく開けた草地も終わり、再び樹林の中を登り坂がきつくなってきた。甲子第1ピークへの登り坂と同じような感じになるが、それほど長く続くことはなく、勾配が緩やかになってきた。
そして写真のように前方が明るくなってきた。道も平坦になるすぐ目の前が甲子第2ピークである。時刻は14時43分、甲子第1ピークから12分で到着できた。
こちらは甲子第1ピークとは対照的で展望はまったく望めないし、道以外に広場があるわけでもないが、本日の最高所である標高1440m地点に到達ということで、遅い昼食とする。
昨晩作った自家製弁当を食していると、甲子山のほうから話し声が聞こえてきた。登山者のパーティのようである。占有していた道を空けると、作業着のような服装の姿がちらりと見えてきた。挨拶を交わすと、まず自転車が置いてあるのにかなり驚いていた。
大黒屋まで下って行くと言うとさらに驚いた様子で、「もう3時だけど大丈夫かね」と言われてしまった。うーん、確かに山の常識的にはかなり厳しいかもしれない。しかし甲子山方面から来ているということは、この先も通れないほど酷いことにはなっていないだろう。
さらに、「この先一ヶ所だけ危険な箇所があるので気を付けるように」とのアドバイスを頂けた。これは収穫だ。どんなトラバースが待っているのだろうかと何だかワクワクしてしまった。
ここでお会いしたパーティの3名方とも同じ作業着姿だったので、たぶん甲子峠に駐車してあった2台の幌付トラックの主だったのであろう。服装だけではなく装備も含めて登山というよりは業務で訪れているような印象を受けた。
食事を終えて、身支度を整える。あまりゆっくりしていられるわけでもないので、早々と出発する。現在時刻は15時8分である。しかし行く手はこんな感じだったりする。これが道?
そう、踏跡はしっかりしている。単に両側の草木が張り出しているだけなので、こんなのは薮漕ぎの範疇には入らない。割合すいすいと進むことができる。
正面には甲子山がうっすらと見えている。
甲子第2ピークからの下り坂は石が少なく土の道でおだやかである。先の写真のような例外もあるが、一部では自転車に乗車できるくらい道は整っている。
鞍部を通過して道は再び登りになるが、勾配は緩やかで自転車を押す力も少なくて済む。
このような中を黙々と進んで行くと、登山道区間で初めての倒木が現れた。道の進行方向正面には折れた大木の幹だけが残っているのが見える。
少し湿った土の道には随所に黄色の四角い杭が埋め込まれていた。右に見える熊笹の緑の色彩が鮮やかで美しい。
このあたりがゆるいものの最後の登り坂で、この後はほぼ平坦になる。
また草木に道を塞がれた。しかし今度ばかりは完全に違う。今まで明瞭だった道がぷっつり途切れているのだ。先が読めないではないか。
どうする?
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